これまで書いてきたことは、Antのほんの上っ面をざっと概観したに過ぎない。言及していないタスクは山ほどあるし、言及したタスクについてももっといろいろな使い方ができる(詳細はPart2以降に記述されるだろう)。だがそれらをすべて紹介することは筆者の手に余る話だ。それでも、いままで使っていなかったがAntは何か役に立ちそうだ、という感想を持ってくれる人がいれば本稿の目的は達せられたと思う。
もしちょっとでもAntを使ってみる気になったら、Ant付属のドキュメント、すなわちAntのインストールディレクトリの下のdocs/index.htmlをWebブラウザを開いてほしい。ここにAntを使うときの基礎となる情報がそろっている。とくに「Manual」→「Ant Tasks」→「Core Tasks」はAntを使う上で拠り所となるリファレンスなので繰り返し見ることになるだろう。それを読むために最低限必要なことは本稿で触れたつもりである。
さらにJa-JakartaプロジェクトによるAntドキュメントの翻訳が http://www.jajakarta.org/ において進められている。 Antの最新バージョンの1.5についても一通りの翻訳が完了した様子で、英文はちょっという方は、ボランティアで翻訳をしてくれた有志の方々に感謝しつつ、こちらを参照されるといい。
AntはもともとApache Software Foundationの中の、Java関連の環境・ツールを開発するJakartプロジェクトの中のひとつのサブプロジェクトである、サーブレット・JSPコンテナTomcatをビルドするツールとして作られた。そういうわけでコンパイルなどのビルド作業を支援することがAntの主要な目的であることは今も変わらないが、Antが有用であることがわかってくるともっと多様な目的に使われるようになった。もっとも単純なところでは、ソースを編集しているところからAntが呼べると便利だとは誰もが考えるわけで、たとえばEclipseとの組み合わせで統合開発環境にAntを組み込む話がこのあとに出てくるはずである。ほかにもユニットテストツールのJUnitや、ソースコード管理ツールであるCVSとの組み合わせでもAntが活躍する。Antはmakeと比較されるような単なるビルドツールの枠を超えて、Javaによる開発の基盤となるツールに進化しつつある。
こうした動きを受けて、Apache Software Foundation内のAntの地位も変遷している。前述の通りTomcatに付属するツールからはじまり、やがてTomcatから独立してJakartaプロジェクト内のサブプロジェクトとなる。さらにはJakartaからも独立して、Apache Software Foundation内のひとつのプロジェクトにまで昇格した。そしてAnt自身、次期メジャーバージョンとしてAnt2の設計作業が進められている。Ant2では従来バージョンの機能拡張の中で混乱した一部規則を整理するとともに、フロントエンド・オブジェクトモデル・タスク実行部分を明確に分離することで、ほかのツールとの連携が容易になることを目標としている。
このようにAntは自身の機能を拡張し、またほかのツールとの連携を拡大することで、その適用の範囲を大きく広げてきたし、今後もその動きがつづいていくことが予想される。Javaでの開発においてAntの存在が前提となる日が遠からず訪れるかもしれない。 Antのすべてをいきなり理解することは難しいにせよ、本稿が言及した程度の使い方だけでもAntは十分に役に立つし、ここで大まかなAntの振る舞いを捉えておけば、Part2以降で説明するより進んだ利用方法の理解の助けになるだろう。Antは使う者のレベルに応じてそれなりの便利さを提供してくれるので、これからAntを使おうという人も変に構えることなく、必要の都度、ドキュメントを見ながらビルドファイルを書いていく、といった使い方をしていけばいいと思う。何よりもまず使ってみることが重要である。

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